日々の医療行為は、もとをただせば先人の努力と発見の積み重ねによって、「そんなことができるのか」と考えられていたものが普通に行われるようになったものです。その発見の大小にかかわらず、のちの医療に影響を及ぼす知見を見いだすことは、得がたい喜びとなります。そのような一歩踏み込んだ活動を、日常性に埋没することなく若い人とともに行う。そして、今まで見えなかった世界が見えるようにする。私たち血液・免疫・呼吸器内科はそのような営みを続けています。
私たちの一番の強みは、実際の患者さんを診ていることです。そのような診療行為の中で、「なぜこうなるんだろう」「ここがこう改善されればいいのに」というヒントがいっぱい隠されています。それを研究につなげる、つまりbedside to benchを私たちは行っています。
次に来るのは、bench to bedsideです。研究によってうまくいきそうとわかった診断法や治療法を患者さんに行う臨床試験がそれです。これを実行するためには、多くの人の協力や手続き、そして倫理観が必要です。また、実際はそう簡単には成功しません。そこで明らかになった問題点を解決するために、次の研究を行う、つまりbedside to benchに戻ります。私たち血液・免疫・呼吸器内科はこのようならせん階段を上る努力を日々続けています。
研究テーマは各人の興味に従ってさまざまなものを行っていますが、血液・免疫・呼吸器の3つの領域が机を並べていることのメリットを活かし、連携し、相乗効果を目指すひとつの軸として、「免疫学」があります。
血液内科では白血球の病気を治療しますが、この白血球こそ免疫をつかさどる細胞です。また、同種造血幹細胞移植に伴うGVHD(移植片対宿主病)、GVL(移植片対白血病)という免疫反応は、移植医療の根幹をなします。膠原病・リウマチ内科で扱う病気は、まさしく免疫の病気であることは論をまちません。呼吸器内科で扱う肺炎、気管支喘息、びまん性肺疾患などの病気は、すべて免疫が関係します。さらに、血液内科、呼吸器内科で扱う血液がん、肺がんに対して、近年免疫療法が大いに期待されています。これらのさまざまな病気は、たとえば免疫を高めればがんの治療に、免疫を抑えれば膠原病の治療に、というふうに、免疫の一連の考え方を応用できます。
このように、免疫学を軸として、3つの科の有機的な連携を図りたいと思います。