血液内科

難治性血液疾患に対する高度医療から地域医療のサポートまで

診療内容

血液内科では、香川県内の治癒困難な血液疾患の治療を行っています。特に集中的・集学的な治療を要する難治性疾患に対して、適応を加味した上で積極的な治療を行っています。また比較的患者数の少ない血液疾患は、専門施設への紹介や専門医による診療が遅れがちになります。そこで、地域医療における血液診療に貢献するために、医局員を県内の各関連病院に派遣し地域診療のサポートを行っています。

(1) 貧血疾患

主に外来で貧血の原因精査と鑑別、および治療を行っています。鉄欠乏性貧血に代表される、栄養障害によって起こる一連の貧血疾患については、多くは外来で診療が完結します。

(2) 造血不全

貧血では赤血球だけの低下がみられますが、赤血球のみならず他の系統の細胞(白血球と血小板)も低下する汎血球減少の場合、何らかの特異的な原因で血液細胞いずれもが作りにくくなっている可能性が考えられ、これを造血不全と呼びます。造血不全の鑑別は外来で十分できない場合もあり、精密検査のための入院が必要な場合があります。特にはっきりとした原因が特定できない汎血球減少を再生不良性貧血と呼び、厳密な診断と長期に渡る治療が必要です。再生不良性貧血に代表される特発性(原因が不明)で難治性の造血不全に対して、ホルモン療法、造血因子療法、免疫抑制療法や造血幹細胞移植などを目的とした入院治療を行います。血球減少の程度が強く初回治療が奏功しない場合には、造血幹細胞移植療法の適応となります。この場合には、すべて当院で準備、移植することが可能です。

(3) 血液腫瘍

高齢者が多いとされる骨髄増殖性腫瘍(かつての骨髄増殖性疾患と呼ばれていたもので、真性多血症、本態性血小板血症、骨髄線維症を含む)については、QOLを維持しながら通院が可能なようにうまく外来で治療できるよう工夫しています。また高齢化に伴って近年増加傾向にある骨髄異形成症候群は、一般に前白血病状態として知られていますが、初回入院で年齢に合わせた化学療法を導入し、2回目以降の治療を外来通院で行っています。同様に、高齢者に増加傾向の悪性リンパ腫の診療も、初回のみ入院治療を行い、以降外来での通院治療で完治を目指します。
最も悲劇的に描かれることの多い白血病については、慢性骨髄性白血病はチロシンキナーゼ阻害剤と呼ばれる分子標的治療薬の内服で寛解が得られるようになり、原則として入院が不要になりました。一方で急性白血病(骨髄性とリンパ性があります)は、発症時に入院治療が必要で、治癒を目指した積極的な化学療法を行います。通常の化学療法で十分な効果が得られない場合には、次に紹介する造血幹細胞移植の実施を検討します。

(4) 造血幹細胞移植

重度造血不全症や難治性血液腫瘍に対しては、造血幹細胞移植が適応となります。香川大学医学部附属病院は1988年に再生不良性貧血の患者さんに対して四国で最初の骨髄移植を手掛けて以来、主に香川県内の血液疾患に対して積極的に造血幹細胞移植の実施に取り組んで来ました。当初は血縁者間骨髄移植のみであった幹細胞ソースも、1996年から開始した同種末梢血幹細胞移植、2003年から臍帯血移植と幅が広がりました。今世紀からは移植方法の改良にも取り組み、2000年以降に日本国内で爆発的な広がりをみせた骨髄非破壊的造血幹細胞移植(いわゆるミニ移植)を当院ではいちはやく2001年から開始しています。また移植方法の標準化に関しては、2002年に香川県で最初の骨髄移植推進財団(現在の骨髄バンク)の認定移植施設となり、翌2003年には臍帯血移植バンクの認定移植施設となりました。2013年には、これも香川県初の骨髄バンク末梢血幹細胞移植採取の認定を受け、骨髄移植、臍帯血移植、末梢血幹細胞のすべての幹細胞ソースでの移植に、全国標準で対応できるようになっています。さらに2014年度にはHLA半合致移植(ハプロ移植)を臨床研究として開始しています。HLA半合致移植は、移植後合併症予防のための前処置を工夫した新たな前処置を組み合わせ、血縁者からほぼ必ずドナーが得られる画期的な移植治療です。当院は香川県で初めてこの最新のHLA半合致移植を実施し、ドナー選択が不要な造血幹細胞移植が可能となりました。
2014年6月の新病棟(南病棟)の診療開始に合わせて、我々血液内科は開院以来本拠地としていた東4階病棟から、南7階病棟に移りました。新病棟では造血幹細胞移植医療および血液疾患がん化学療法のためのクリーン・フロアを備え、従来の造血幹細胞移植チームをさらに強化して診療に当たっています。造血幹細胞移植チームは、医師、看護師、歯科口腔外科医、薬剤師、栄養士、理学療法士に加えて、緩和医療チームやソーシャルワーカーなどの地域連携チームから新たな診療サポートを得ています。2015年4月からは病棟薬剤師の常駐によりさらに診療クオリティーが上がっています。このような造血幹細胞移植医療に限らず、血液疾患患者の診療、特に血液がん診療面では、我々香川県下の血液内科医は結束してこれに当たっており、病院間相互での患者さんの紹介に対応していますので、当大学附属病院から遠方の方も遠慮なく受診してください。

(5) 血液凝固異常

血友病をはじめとして先天性の血液凝固異常症など、比較的稀な疾患を、主に外来でフォローします。特発性血小板減少性紫斑病、発作性夜間血色素尿症の急性発症期にも迅速に対応できるよう環境整備しています。

対象症候

(1) リンパの異常

症候性リンパ節腫大、症候性リンパ節症、脾腫

(2) 血球の異常

白血球増多、白血球減少、貧血、血小板減少、出血症状

(3) 出血傾向

歯肉出血、四肢の紫斑、皮下出血、止血困難な消化管出血、過多月経

対応疾患

(1) 貧血疾患、造血不全

各種栄養障害性の貧血疾患、若い女性に特徴的で貧血疾患の中では最も頻度の多い鉄欠乏性貧血。高齢者に多い骨髄異形成症候群。典型的な造血不全疾患である再生不良性貧血や発作性夜間血色素尿症、ファンコニ貧血。赤血球が破壊されて生じる溶血性貧血の中でも代表的な自己免疫性溶血性貧血や、赤血球膜の異常によって生じる球状赤血球症などの赤血球膜異常症。遺伝性疾患のサラセミア、ポルフィリン症など。

(2) 血液腫瘍、血液悪性疾患

白血病(急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など悪性造血器腫瘍の他、骨髄増殖性腫瘍に含まれる真性多血症、本態性血小板血症、骨髄線維症などの比較的良性の造血器腫瘍が含まれます。

(3) 血液凝固線溶異常

特発性血小板減少性紫斑病、急性および慢性の汎発性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病の他、血友病や先天性血液凝固因子欠乏症などの止血異常症があります。

実績紹介

病床定数:15床(2014年6月南7階病棟移転以降)
クリーンエリア病床:13床
うちクラス100病床:4床

年間の造血幹細胞移植件数
香川大学血液内科の連携施設

※クリックすると、拡大表示されます。

以下2019年診療実績から
1日平均外来患者:19.5人
年間の新規紹介患者:127人
年間の院内相談症例:201件
年間の延べ入院患者数:4,754人

医師の紹介

職名 氏名
教授 血液内科診療科長 門脇 則光
講師 血液内科副診療科長 今滝 修(外来医長)
助教(学内講師) 藤田 晴之
助教 植村 麻希子(病棟医長)
助教(輸血部) 内田 俊平
医員 石田 智也
医員 芳田 峻典