教室概要

臨床医学のサイエンスとアートを究める

教室紹介

医療は、人のからだという複雑な形而下と、こころというとらえ難い形而上を深く洞察して、病に苦しむ患者さんに手をさしのべるという、果てしなくも魅力的な領域です。この世界に身を投じたことを心に刻んでベストを尽くす専門家集団、それが香川大学血液・免疫・呼吸器内科学教室です。

人のからだは物理化学の法則で動くという点から、サイエンスの対象になります。一方、あまりに複雑な人体にはわからないことがたくさんありますし、ここに心の問題が入ってくると、サイエンスだけでは対処できない曖昧な問題に日々遭遇します。このようなサイエンスとアートの絶妙のバランスを図り、目の前の患者さんにとってベストの道を探す。そのために、私たちは毎日ディスカッションし、勉強し、思いを巡らせて、お互いを高め合っています。

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人のからだはいろいろな部分、つまり臓器からなりますが、特定の臓器だけでなくからだ全体に目を配るのが昔ながらの「内科医」といえます。私たちの教室は、「血液内科」「膠原病・リウマチ内科」「呼吸器内科」という3つの部門からなり、血液内科は全身を巡る血液の病気、膠原病・リウマチ内科は関節やさまざまな内臓を冒す膠原病を中心とした病気、そして呼吸器内科は全身状態を映し出す鏡ともいえる肺の病気を扱います。したがって、私たち血液・免疫・呼吸器内科は、全身を診る「内科のお医者さん」の心を色濃く持っています。そして、日々の診療で患者さんの喜びを自らの喜びとし、診療から浮かび上がった問題点や不思議を科学的に解明する研究を行い、医療という仕事のやりがいを若い人に伝えて後進を育てるという臨床・研究・教育のすべてに心血を注いでいます。

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教育

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内科学は医療全体の基本です。血液内科で扱う白血病などの血液がんや膠原病・リウマチ内科で扱う膠原病などは専門的色彩が強いと受け止められがちですが、実際の診療で行っていることは、これらの病気がからだの各所に引き起こす問題の全身管理です。また、呼吸器内科で扱う肺の病気は全身にさまざまな影響を及ぼします。したがって、若い人が将来どの方向に進むにせよ、当科で研修した内容や考え方は必ず役に立ちます。

学生や研修医の教育では、ます臨床医学の底流にある共通の技法や考え方が身につくよう指導します。そのためには、ベッドサイドでのさまざまな手技、カンファレンスでのプレゼンテーション、病棟で日常的に行っているディスカッションへの参加を通じて現場で汗を流してもらうとともに、抄読会や勉強会を定期的に開催して、日常診療の先にある最先端医療やサイエンスを伝え、厚みのある教育を展開します。

臨床

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大学病院の第一の役割は、難しい病気の最後の砦となって、患者さんや地域の医療機関の先生方に安心を届けることです。そのために、血液内科、膠原病・リウマチ内科、呼吸器内科の3診療科で提供できる最新の医療を実践しています。また、全身疾患である私たちの科の病気ではさまざまな症状が起こります。これらに適切に対処するために、香川大学病院のいろいろな科のスタッフと連携して、最適な治療を行います。

また、高齢化に伴ってご高齢の患者さんが増えています。そのような患者さんは複数の病気を抱えておられたり、強い治療では副作用が出やすくなったりするため、一層高度な臨床判断が必要です。私たちは、患者さんの年齢や体力に応じたきめ細かな治療を心がけ、個々の患者さんに合った最良の医療を追求します。それとともに、病診連携、病病連携を適切に行い、地域医療機関とのコミュニケーションを密にして、限られた医療資源を最大限に活かしていきます。

研究

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医学・医療の発展が先人の貴重な研究、無数の努力によって遂げられてきたことは言うまでもありません。このような医学研究は、「なぜだろう」という純粋な知的好奇心や、世界中の誰もが見つけていなかった重要な真理を発見する達成感、そして、これまで救えなかった目の前の患者さんに新たな希望を届けられるという利他の心によって支えられています。

医学研究は、生命現象の根源を深く追究する基礎研究から、患者さんのデータを用いて臨床の現場から情報を発信する臨床研究まで広いレンジをもちます。私たち臨床医の大きな特権は、生身の患者さんとともにあることです。実際の患者さんに起こっていることを目の当たりにし、そこからヒントを得て研究を行い、医療の発展に真に貢献する成果を挙げると、深い充実感を味わうことができ、また臨床医としての幅も広がります。このような研究は、最初はハードルが高く感じられますが、常に探究心を研ぎ澄ませて日々の診療にあたり、少しずつ成長することによって、意義深い新知見に到達することができます。その過程を若い人とともに味わい、医学・医療に独自の足跡を残すことを目指します。

香川大学病院血液・免疫・呼吸器内科学教室の目指すもの

このように、医学・医療の世界には汲めども尽きぬ面白さ、奥深さがあります。「内科の中の内科」と言ってもいい私たち血液・免疫・呼吸器内科医は、この幅広く深遠な世界を思う存分に味わうとともに、命に関わる病気にかかられた患者さんの苦しみを和らげ、その命を救い、患者さんに安らぎを届けることができます。この例えようもないやりがいを同僚や若い人と共有する、それが香川大学血液・免疫・呼吸器内科です。これからも、同僚、研修医、病院内外の医療スタッフ、そして患者さんと一致団結して、地域医療の充実に邁進します。さらに、ベッドサイドから得たヒントを大きく膨らませて、これからの医療に影響を及ぼす新たな知見を見いだす冒険を続けていきます。

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香川大学病院血液・免疫・呼吸器内科学教室の強み・特徴

その1「全身疾患」「がん、感染症、自己免疫疾患などさまざまなカテゴリーの疾患」といった「いかにも内科的」という要素を持つ。

当科を構成する血液内科、膠原病・リウマチ内科、呼吸器内科の3科は、全身に目配りする、診断に謎解きの要素が多くある、内科的な治療法が効きやすいという臨床的な共通点をもちます。また、がん、感染症、自己免疫疾患、アレルギー疾患といった多彩なカテゴリーの病気を扱います。したがって、「内科好き」の人にはぴったりの科です。

その2「免疫」を軸に、がん、自己免疫疾患、アレルギー疾患などの病態研究や治療開発に取り組めるという一貫性を持つ。

もうひとつ、3つの科に共通する重要な点として、いずれも「免疫」に大きく関わる点が挙げられます。膠原病・リウマチ内科はまさしく免疫の病気を扱いますし、血液内科が対象にする白血球は免疫をつかさどる細胞そのものです。また呼吸器内科が扱う喘息や肺炎などは、免疫が強く関わる病気です。さらに、血液内科の血液がん、呼吸器内科の肺がんに対して、今後免疫療法が大変有望視されています。このように、「免疫学」によって3つの科を統一的に俯瞰することができます。

その3香川県という日本一面積が小さく、端から端まで短時間に移動できるコンパクトな県内で、大学病院や関連病院が綿密に協力し合って診療を進めている。

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香川県は日本一面積が小さく、広い讃岐平野には整備された快走ルートが縦横無尽に走っています。高松自動車道を使えば、県の端から端まで1時間強で移動できます。このコンパクトさにより香川県内は人の行き来がしやすく、県内の病院が綿密に協力するのを容易にしています。また、四国の玄関口として岡山や関西に近く、それぞれJRで1時間、2時間で行けます。さらに、瀬戸内海に面した穏やかな気候、少ない自然災害と、自然条件に恵まれています。このような数々の有利な地理条件により、香川県は大変住みよい県で、「隠れた穴場」と言ってもよいでしょう。